営業プロセスの中で最も重要なヒアリングの流れとコツ、必要な事をご紹介
法人営業であれば、おおよそ、どの業界でも、営業プロセスとしては、(1)商談準備→(2)お客さまに関する情報取集・把握→(3)ヒアリング→(4)提案準備→(5)見積/プレゼン→(6)クロージング→(7)受注→(8)納品→(9)アフターフォローのような感じになると思います。
この営業プロセスの中で、営業がスキルを向上させていく為に必要な事は、「聴く力・話す力・情報を集める力・提案する力」など色々あります。
この中で最初に身に付けたいのが「聴く力」です。
「聴く力」が無ければ、お客様の現在の状況や問題がわからないまま、営業が一方的に商品・サービスの説明を行っても、お客様の心に響くことはなく、現状や問題についても何も知ることができません。
まずは、お客さまの状況や問題を把握するために「聴く力」が必要になります。
状況・問題を把握した上で、さらに「話す力」で内容を深く掘り下げ
その後「情報を集める力」で、情報を集めたら、お客さま自身が気付いていない、隠れた、課題やニーズを見つけ、お客さまにメリットを感じてもらえる「提案する力」が必要になってきます。
「営業は”聴く力”から始まる」とも言われるほど、「聴く」という力は重要です。
この「聴く力」を「ヒアリング力」とも言われています。
逆の言い方をすると、ヒアリングが出来なければ、お客さまに響く十分な提案はできません、十分な提案ができないということは、営業の成果である受注に結びつきません。
営業として、最初に身に付けるべきスキル、ヒアリングの流れとコツをご紹介します。
ヒアリングの目的は?
提案や見積に必要な情報を聞くこと
通常の商談は、あなたの会社1社ではなく、複数社から提案・見積をとり、どの会社提案が1番自社の課題を解決できそうか?費用対効果が1番優れているのはどの会社か?など比較検討を行い、契約する会社を決定すると思います。
最終的に、お客さまが判断材料となる、提案や見積を作成する為に必要な情報を聴きだすのがヒアリングの1番の目的です。
お客さまは見ている
お客さまは、会話をしている中で、その営業が、自社にとって有益な人なのか判断しながら・・・いや、はっきり言うと、「使える営業」なのか「使えない営業」なのか「普通」なのかを判断して、提供する情報の内容や量をコントロールしています。
例えば、若手の時にありがちなのは、事前に一生懸命、お客さまの情報を集め、ヒアリングシートを作成し、商談が始まると、作ってきた資料などで、聞きたい事を、一方的に矢継ぎ早に質問してしまっているケースです。
この時、お客さまは・・・
この人、まだ、営業経験が浅そうで大丈夫かな?
と思い、重要な情報などをあまり話してくれなくなる可能性があります。
お客さまに「使える営業」という印象を与えるのもヒアリングの目的になります。
ヒアリングとは?
ヒアリングでは、まず、お客さま自身が認識している、課題や要望について話を聴くことからスタートすると思います。
お客さまの話を聴きながら会話を進め、質問など行いながら、色々な情報を得る事で、理想と現実のギャップ(真の課題)が何かを明確にしていくことがポイントになります。
また、ヒアリングで充分な情報を聴く事ができる状態といのは、お客さまと良い信頼関係が築けている事にもなります。
きちんと、ヒアリングを行い、真の課題、その解決策が、しっかり提案に反映されているか、ここまでの一連の流れが、営業活動での重要なポイントになります。
ヒアリングの流れを考える
商談の多くは、自社の商品・サービスにお客さまから問合わせがあった、もしくは、電話などで商品説明をするとお客さまが興味を示してくれたなどで、商談がスタートするケースが多いと思います。
標準的なヒアリングの流れ
このように、お客さまが、商品・サービスに興味を持っている時の標準的なヒアリングの流れは以下のようになると思います。
- 挨拶+軽い雑談
- 自社の商品・サービスの紹介
- 質疑応答(ヒアリング)
ただ、ここで注意しなければならないのは、ヒアリング力が無いと、自社商品・サービスの後に質疑応答を行うので、
どうしてもヒアリング(質問)の範囲が、自社商品・サービスの範囲内になってしまい、本当に必要な課題などを聞き出すことができなくなります。
こういう事を防ぐ為に、以下のような流れで商談を進めるとヒアリング内容を広げる事ができます。
質問の範囲を広げるヒアリングの流れ
質問の範囲を広げる為には、挨拶・雑談の後に、1回目のヒアリング(現状確認)を行い、質疑応答で2回目のヒアリング(真の課題)を行います。
- 挨拶+軽い雑談
- 雑談からお客さまに役立ちそうな情報提供を行う
- お客様の現状や課題をヒアリング(1回目)
- 課題に関して役に立てそうなことを明示
- 自社の商品・サービスの紹介
- 質疑応答(ヒアリング2回目・真の課題)
では、具体的に、どのような内容で進めればいいのかご紹介します。
まず、「2.雑談からお客さまに役立ちそうな情報提供を行う」は、軽い雑談の後に、お客さまの現状をヒアリングする為、自分の業界の情報などでつなぎ的な会話をします。
例えば・・・
そういえば、最近ニュースで、新型のコンピュータウィルスが広がっているみたいですけど、御社の方は、何か対策をとられているんですか?
「3.お客様の現状や課題をヒアリング」では、素直にお客さまに質問を投げかけます。
例えば・・・
今回、当社にお問合せ頂いた経緯などについて教えて頂けませんか?
また、これにより、後で行う「4.自社の商品・サービスの説明」の時に、「当社の〇〇というサービスが、お客さまが考えるこの理想の実現に向けて、△△のような形で貢献できます。」というような内容でお客さまにアピールする事ができます。
ですので、お客さまの状況や課題、期待、要望といったことをできるだけ多く聞けるようにしていきましょう。
「4.お客さまの課題に関して役に立てそうなことを明示」では、例えば・・・
〇〇という問題でしたら、当社の実績として3つのサービスをご紹介できるかと思います。
後、「4.自社の商品・サービスの説明」を行う際ですが、
先ほど説明したように、自社の商品・サービスの説明の時、ヒアリングで得た情報を元に、有効だと思う商品・サービスについてはをアピールしましょう。
先ほど言われていた〇〇という問題は、この〇□△サービスで対応が可能だと思います。
「先ほど言われていたXXというご要望は、〇〇サービスで対応が可能だと思います」
次に、「5.質疑応答(ヒアリング)」ですが、私が、このタイミングでよく聞くのは「競合他社情報」です。
最初のヒアリングでは、まだ、会話も温まっていないので、質疑応答の時で、会話が一旦落ち着いたタイミングを見計らって・・・
ちなみになんですけど、今回何社くらいに相談されていますか?
のような感じで聞いています。
恐らく、ほとんどのお客さまは「X社くら」いと教えてくれると思います。
ここで教えて貰えない場合、あなた自身がまだ信頼されていない、もしくは既に他社に決めているなど、あまりいい状況ではないと考えられます。
ですので、教えて貰えない場合は、相当な努力が必要だと思ってください。
このように、商品・サービスの説明前に、ヒアリングを行い、目に見えている現状の課題等を把握し、質疑応答の際には、真の課題を見つける為に、さらに深いヒアリングを行う事ができます。
ヒアリングを行う為に必要な事
お客さまに興味を持つ
質問をするには、お客様の事を知る事、それは、お客さまに興味を持つことです。
まずは、お客さまのホームページの確認から、どんな事業をやっているのか、取り扱っている商品・サービスにはどのような物があるのかなどを確認します。
それ以外にも、お客さまの取引先、業界、競合他社などの情報を幅広く集めましょう。
仮説を考えよう
お客さまに関係する情報を集めたら、仮説を考えましょう。
- こんな事に困っているんじゃないかな?
- これから、こんな事が必要になるんじゃないかな?
- こんな事に、取り組んだらいいんじゃないかな?
- 本当に問題なのは、こんな事じゃないのかな?
・・・など、お客さまにとってプラスとなる事を考えましょう。
まずは、質問する事(Whyで深堀)
ただ単にお客さまの話す内容を「そうなんですね」と聞いていては、お客さまが、考えている事、思いなどを聞き出す事はできず、会話も続かず、深い会話をする事もできません。
結果、課題を想定する事はできません。
お客さまの言葉に対して、主体的に興味を持って「なぜそう思うのか」という風に考え、気になる言葉、疑問を感じる言葉があれば「Whyで深堀していく」ことで、初めて重要な情報を引き出せるということを押さえておきましょう。
質問の方法を使い分ける
質問する方法には、オープン・クエスチョンとクローズド・クエスチョンという2種類の質問方法があります。
オープン・クエスチョンの例
「これについて、どう思いますか?」「今後どうしていく予定ですか?」
などのように、相手に自由に答えてもらうような質問の仕方です。
会話の幅が広がりやすいのが特徴で、お客さまからより多くの情報を引き出したい場合に有効です。
クローズド・クエスチョンの例
「はい、いいえ」の二択や「AorBorC」の三択などで答えられるような、回答範囲を狭く限定した質問の仕方です。
お客さまの考えや事実を明確にしたい場合に有効です。
質問の内容比較
同じような質問内容でも、オープンとクローズとでは大きく異なります。
例にすると・・・
◇オープン・クエスチョンの場合
現在利用されている〇〇サービスでは、どこにご不便を感じていますか?
そうですねー、処理に時間がかかりすぎる点ですかねー
◆クローズド・クエスチョンの場合
現在利用されている〇〇サービスに不便な点はありますか?
特にないですねー
これらを使い分けることができれば、深堀するときに有効と言えますが、慣れていない場合は、言葉を選びがちになり、会話がギクシャクしてしまう場合があります。
ヒアリングでは、ニーズを探る・新しい情報を得る事などが目的ですので、
まずは、常にオープン・クエスチョンで質問を行えるようにしましょう。
慣れてくれば、「ん?白黒はっきりした考えが聞きたい」と思う時が出てくると思います。
その際、クローズド・クエスチョンで質問を行えるようにしましょう。
このようなヒアリングを行い、真の課題を見つけ、解決するために、自社では何ができるのかを考えていく事が、営業には必要です。
ヒアリングを高める為のフレームワーク
ヒアリング力を高める為には、営業として、必要な情報は必ず聞き出せるように流れを組む事です。
商談の際に有効なヒアリングフレームワークをを簡単にご紹介します。
詳しい内容は、別記事で紹介していますので、是非ご覧ください。
SPIN話法
ヒアリング力を高める方法としてSPIN話法というものがあります。
- S(状況質問):お客さまの現状を確認するための質問です
- P(問題質問):お客さまの抱えている問題、困りごとを確認するための質問です。
- I(示唆質問):お客さまが、認識していない潜在的な問題に気付かせる質問です
- N(解決質問):最後にここまでの質問によって相手に認識させた問題を解決するとどうなるか、を確認する質問です。
SPINの順に質問していくことで、お客さま自身も気づいていなかったようなことに気づいてもらい、最終的には、認識した問題が解決する事で、どんな良いことが起きるのかをイメージしてもらうことができます。
お客さまは、自社にとって、「あなたの会社の商品・サービスが必要である」と思ってもらうことができ、提案内容を受け入れてもらいやすくなります。
つまりSPIN話法は、一方的な営業トークをすることなく、お客さま自身が問題や解決法に気づいて製品・サービスの付加価値を感じてくれるテクニックです。
詳しくは、以下の記事でご覧下さい。
BANT情報
- B(Budget:予算)
- A(Authority:決裁権)
- N(Needs:必要性)
- T(Timeframe:導入時期)
この4つの頭文字を取ったフレームワークです。
このBANT情報は法人営業においてヒアリングするべき項目です。
いま抱えている課題に対して、どのぐらいお金をかけることができて、誰がその意思決定を行い、その必要性がどのくらいあって、いつまでに解決したいのか。
この情報の内容次第で、提案内容や、商談の進め方も変わってきます。
詳しくは、以下の記事でご覧下さい。
MEDDICモデル
MEDDICは企業の購買プロセスを把握する際に重要となる情報で、これによって受注予測の精度を高めることができます。
- M(Metrics:測定指標)
- E(Economic Buyer:決裁権限者)
- D(Decision Criteria:意思決定基準)
- D(Decision Process:意思決定プロセス)
- I(Identify Pain:課題問)
- C(Champion:擁護者)
この6つの頭文字を取ったフレームワークです。
3C分析
- Company(自社)
- Customer(顧客・市場)
- Competitor(競合)
この3つのCの頭文字を取ったフレームワークです。
自社の分析に活用することも多い3C分析ですが、ヒアリングでも効果的です。
3度目のヒアリングはチャンスタイム
「ヒアリングの流れを考える」のところで、2回のヒアリングを行う事を説明しました。
ただ、これで、ヒアリングは終わりだと思っていませんか?
私の経験上、商談後、帰りのエレベーター前までや玄関前までの数分間が、1番本音を聞きやすいヒアリングのチャンスタイムです。
なぜなら、このときお客さまは、商談が終わって緊張を解いています。
お客さまはリラックスした状態で、一緒に歩きながら、コソコソ話のように会話できるので、より突っ込んだ会話ができます。
例えば、私が良く聞くのは・・・
ところで、実際のとこ、他社さんとの商談は、どの辺まで進んでますか?
など、商談中にはなかなか聞けない、お客さまの内部情報を中心に聞いています。
ニュアンスの度合はありますが、結構、何らかの情報を教えてくれます。
ゼロ・ヒアリング
これは、訪問前に、できる範囲で事前にヒアリングを行うテクニックです。
ある程度経験を積まないと難しいテクニックですが、まずは少しずつ練習していくという意味でご紹介します。
通常、訪問する際には、事前に電話やメールでアポイントの日時をお客さまと決めると思います。
この時、日時の調整だけで終っていませんか?
このアポイントの連絡の際に、ついでに商談内容を聞いたり、仮説をぶつけてみます。
電話であれば、会話の中で質問をします。
メールであれば、本文に記載してみます。
少しでも回答がもらえれば、それをヒントにすれば、何も知らない状態より、仮説や商談ストーリーなどの精度が高くなり、より内容の濃いヒアリングができます。
電話の場合は、短い会話の中で、お客さまが想定していない状況で、スムーズに質問をしなければならないので、聞くタイミングと聞き方には慣れが必要になると思います。
メールの場合は、文字だけの質問になりますので、お客さまにどう伝わるか・・・
「偉そうに書いているなー」「何を言っているかわからないなー」など、伝わり方が悪ければ、訪問する前に印象が悪くなってしまう可能性があるので注意が必要です。
本当に丁寧に、わかりやすく、簡潔に記載しなければダメです。
少しでも不安がある人は、メールは止めて、電話でのヒアリングをおススメします。
もし、アポイント時に、ゼロヒアリングができなかった時・・・
例えば、訪問前日にお客さまに電話します。
明日のお打合せ、ご都合大丈夫でしょうか?…では、明日よろしくお願いします。ちなみにですが、今回のお問合わせ頂いた件についてなのですが・・・
といった感じで、数分で商談内容をヒアリングしてみましょう。
ヒアアリングシート例
最後に、ヒアリングで聞いておいたほうがいい項目を一覧にしましたので参考にしてください。
- 現状(組織、事業、現在利用している他社商品)
- 背景
- 現在困っている事
- これから求めている事
- 現在、1番解決したい悩み
- 商品・サービスを選ぶ上で重視しているポイント
- おおまかなスケジュール感(納期)
- おおまかな予算感(希望価格)
- 決裁までの流れ、手続き、購買形態
- キーパーソン、検討部門、ユーザー部門等の登場人物
- 競合他社の状況
- 紹介した製品・サービスに関する感想
まとめ
今回はヒアリングの流れとコツについてご紹介しました。
ヒアリングの流れとコツを押さえ、何回も経験を積むことで、自分なりのヒアリングスキルを身に付ける事ができるくと思います。
最近の商談では、各社似たり寄ったりの機能や品質で、技術による差別化が難しくなって価格勝負になる傾向もあります。
また、逆に、金額差をつけにくいサブスクリプションのサービスも多くなっています。
お客さまは、必ず価格が1番安い商品・サービスを選択されていますか?
答えは「NO」ですね。
それで何故でしょうか?機能・品質・金額的に、あまり差が無い場合、どのような理由で選んでいるのでしょうか?
それは「営業」による差別化で選んでいるからです。
営業の差別化とは・・・
「よく考えてくれていて、かゆい所に手が届く」
「うちの事情をよく理解してくれていて、任せられそうだ」
など、営業に対する、信頼度の大きさで判断されています。
信頼度の元には、ヒアリング力があるから、お客さまの事情を理解でき、また、そのヒアリングの姿勢に信頼を感じるんです。。
なぜなら、お客さまは、複数人(社)来る営業に、全て同じ回答をしている訳ではありあません。それぞれの営業の質問に対して、それぞれ回答しています。
なので、質問されていない事をわざわざ教えてはくれません。
また、各営業が、同じような内容の質問をした場合でも、お客さまは、各営業に平等に同じ内容を回答してくれているわけでもありません。
ですので、各営業でヒアリング内容に差が出て、それが提案内容に差が出るという結果になります。
商品・サービスの差別化ではなく、営業の差別化で契約を取れるよう、ぜひこの記事を参考にしていただき、ヒアリング力を高めていただければと思います。