トリビア

取引先が倒産したら?! | 営業が日々気にしなければいけないチェックポイント

ろくまる

もし、あなたが担当している取引先が当然倒産したら、どうしますか?

日本の企業倒産件数は、年々変動しています。以下は、過去の企業の倒産件数です。

Q
日本の企業倒産件数 → +をクリックで表示

2020年:約8,000件の倒産
2019年:約7,700件の倒産
2018年:約6,600件の倒産
2017年:約5,400件の倒産
2016年:約4,200件の倒産
2015年:約4,400件の倒産
2014年:約5,200件の倒産
2013年:約6,000件の倒産
2012年:約7,000件の倒産
2011年:約10,000件の倒産

企業の倒産件数は、特に、2011年の東日本大震災の影響により、倒産件数が急増しました。しかし、その後は少しずつ減少傾向にあります。2020年は新型コロナウイルスの影響で倒産件数が増加しましたが、概ね5,000件~7,000件前後、毎年発生しています。

Q
日本の主要産業別倒産件数 → +をクリックで表示

①製造業
2020年:約2,300件の倒産
2019年:約2,000件の倒産
2018年:約1,800件の倒産

②卸売・小売業
2020年:約1,800件の倒産
2019年:約2,000件の倒産
2018年:約2,000件の倒産

③建設業
2020年:約1,300件の倒産
2019年:約1,200件の倒産
2018年:約1,000件の倒産

④情報・通信業
2020年:約250件の倒産
2019年:約180件の倒産
2018年:約180件の倒産

業種で見ると、卸売・小売業は倒産が沈静化している一方で、製造業、情報通信業が増加しているという傾向です。

このように倒産していない業種はありませんので、今、取引しているお客さまが倒産してしまう可能性はゼロではありません。

もし担当している取引先が倒産してしまうと、営業は、情報収集やお金や商品の回収などに奔走しなければならず、精神的にも負担がかかる中で通常の営業活動もしなければならなくなります。

この記事では、実際に私が営業として「2社の倒産経験」を元に、取引先の状況を事前に「何かおかしい?!」と確認する為には、どのような視点が必要なのかご紹介します。

取引先の倒産とは?

一般的に法人同士の商取引では、売り手側は、商品の注文を受け、納品を行い、代金の請求は1か月分の注文代金をまとめて請求します。

買い手側は、送られてきた請求書を元に代金の支払いを行います。

このような取引を「掛け取引」といい、一般的に広く用いられています。

ただ、この「掛け取引(掛売)」には、売り手側は「買い手が、何らかのアクシデントが発生し、一定期間後に代金を支払ってくれないリスク」を負っていることになります。

例えば・・・

得意先A社からパソコン100台の受注をもらいました。

仕入先B社からパソコン100台を購入し、得意先A社に納品した後、お金を払ってもらう期日の前に、得意先A社が倒産してしまいました。

どうなる

この場合、営業は、得意先A社からパソコン100台の代金回収(お金が貰えなく)ができなくなる上に、仕入先には、パソコン100台分の代金を支払う事になります。

営業は

営業は注文をとることに注力すればよいのではなく、注文(受注)から納品、代金回収(現金振込・手形決済まで)までが営業の仕事です。

与信管理とは?

掛け取引」を行う上で、倒産などによる代金未払いのようなリスクを負う為、そのリスクを管理する為に「与信管理」が必要になります。

与信管理の“与信”は、「信用を与える」という意味の言葉です。

与信管理では、まず、取引をして問題ないか、信用してよいかなどの信用調査を行い、取引の可否を判断します。

取引が問題ないと判断した場合は、取引金額の上限を定めたりの条件を決め、定期的に取引先の状況(業績は?赤字?経営者が変る?等)を管理します。

企業で定期的に取引先の状況を確認する方法として、信用調査会社などに依頼をしてチェックしていると思います。

信用調査会社が、取引先の信用度をチェックする方法としては、決算書訪問などのよる信用調査のレポートなどから判断する方法が一般的です。

しかし、昨今の経営を取り巻く環境の変化が著しい現在においては、年数回程度の定期的な調査結果だけに頼っていては不安が残ります

営業の情報収集能力が必要

営業は、日々取引先と会話したり、訪問をしたりしているので、取引先の微妙な社内状況の変化を、いち早くキャッチする機会が多いはずです。

営業が取引先を訪問した際に、社長や従業員の行動、事務所の雰囲気などからその会社のおかしい兆候を、いち早く察知する事が、営業の重要な仕事の1つと言えます。

たとえ、書類の定期的なチェックで、業績や評点などでは問題が無さそうでも、もし、今、問題を抱えていれば、リアルな現場には、なんらかの兆候がみられるものです。

しかし、営業が、こういう情報にあまり認識がなく、また観察ポイントを知らなければ兆候はなかなか見つけられません。

では、どのような兆候があれば、その取引先が「おかしい」のでしょうか。

次にチェックすべき主なポイントをあげていきます。

取引先のチェックポイント

業績の落ちてきた企業は、経営層の行動にも変化が起き、当然社員の士気も落ちてきますし、事務所の景観にも変化が出てきます。

また資金面が不安定になれば取引先とのトラブルも多くなります。

色々な角度から、訪問時に営業が、すぐに出来るチェックポイントをまとめましたので活用してください。

社長・役員

営業の中で、頻繁に社長や役員と直接商談する機会は少ないと思います。

ですので、打合せする担当者の方などから、社長や役員の状況をさりげなく聞いてみましょう。

また、信用調査会社のレポートなどで、業績不振などのマイナス情報が出された場合は、社長や役員への面談を行いましょう。

自分ひとりでの面談が難しい場合は、できるだけ役職の高い上司に、事情を説明し同行してもらいましょう。

チェックポイント
  • 社長が以前より、不在が多くなっている
  • 社長の出社時間が不定期になっている
  • 社長の肩書が増えている
  • 経営や後継者問題に関する話題をもち出すと話をそらす
  • 役員の間でもめごとがある
  • 有名人との写真が飾られている

事務所・オフィス

営業をしている中で1番に変化に気付きやすい場所です。

いつも感じている雰囲気と「あれ?少しなんか雰囲気変わった?」と悪い方の雰囲気を感じたら注意しましょう。

チェックポイント
  • 机などの書類が片づいていない
  • 会社の雰囲気が急に悪くなった、暗くなった
  • 机などの配置が乱れたままになっている
  • 応接室にほこりがたまっている
  • 受付の花がしおれている
  • 蛍光灯が切れたままになっている
  • 事務所やトイレが清掃されていない
  • 壁の額縁が曲がっている
  • 事務所や応接室が豪華すぎる
  • 空き机が多く、極端に片づいている
  • 不審な人物が出入りしている

このような状況があると、「危険性のある会社」「危ない会社予備軍」の可能性があるかもと感じてください。

従業員

これも、事務所と同様、変化に気が付きやすい点だと思います。

チェックポイント
  • 社員のモラルが低下している
  • 社員の表情が暗い
  • 電話応対の声に覇気がない
  • ちゃんと仕事をしている感じがない
  • 挨拶や応対する態度が悪い、暗い
  • 自社や社長を非難している
  • 社員が電話で誰かともめていた

人事関連

この情報は、見ただけでは中々わからない情報です。

日々の打合せで、担当者から、部長職や取締役の名前を聞いておき、打合せの中で、さりげなく状況を聞いてみましょう。

チェックポイント
  • 幹部社員やベテラン社員が急に退職した
  • 頻繁に人がいなくなる(退職や解雇など)
  • 知らない社員が増えた(出向受け入れなど)
  • 突然の人事異動が頻繁にある

商品・技術・サービス

チェックポイント
  • 返品や期限切れ在庫が多い
  • 在庫が無造作に積まれ、整理されていない
  • 店舗、バックヤードの整頓は行き届いていない

財務・資金繰り

チェックポイント
  • 未回収の売掛金が増えている
  • 自社に取引条件の変更を申し入れてきた

取引先の倒産は突然やってくる

実際の私の体験談として、取引先が倒産したのは2件あります。

1社目の倒産経験

ある日訪問したら、受付横のソファーに、金髪・ピアスを付けた人が2人横柄な態度で座っていました。

ろくまる
ろくまる

んっ?なんでこんな場違い的な人がいるの?

と思いましたが・・・そこまで気にしませんでした。

応接室に行くまで、社内の雰囲気も少し暗く感じましたが・・・これも、あまり気にしませんでした。

1か月後くらい、メールをして1日経っても返信が来ず、電話を掛けたら平日の昼間なのに誰も出なくて
おかしいと思い取引先に向かうと、事務所の入り口に「倒産しました・・・、連絡は○○弁護士まで」と張り紙があり、呆然としました。


そこからは、もう探偵のように、役員や管理職の方の行方を捜す為に電話したり、弁護士に連絡したりと、通常の営業活動そっちのけで大変でした。
訪問した時に「何か変だな」とは感じましたが、まさか倒産するとは思わず、上司へ相談も報告もしていませんでした。
本当に反省です ・・・

2社目の倒産経験

日頃から良くしてもらっていた取引先の役員から、突然メールで「挨拶しにいきたい」と連絡があり、来社して頂きました。

役員の方が・・・

お客さま
お客さま

実は、3か月後に会社を辞める事になります。
各支店も順次閉鎖する予定です・・・

・・・と会社の内情を教えてくれました。
それから、私は、役員の話は聞かなかった事にして、徐々に取引を減らしていきました。
そして、1年後に、取引先は倒産しましたが、その時点では、取引は数万円だけで、被害を最小限に押さえる事ができました。


これは、ご自身も、その時期大変だったはずなのに、わざわざ、私の為に話をしに来てくれた役員の方に、本当に心から感謝しました。

日々普通に取引をしていても、取引先の倒産は、何の前触れもなく突然起こります。

取引先の倒産を知った時点で、取引先から回収していない売掛金納品する商品など、様々な問題が発生します。

倒産の情報を知った場合は、適切かつ迅速な対応をすることが重要です。

このような事は、担当営業だけで対応する問題ではないので、まずは、上司・会社の指示に従い行動してください

まとめ

取引先が倒産してしまうと、営業は回収や事後処理に奔走し、経理部門は突発的な経理処理や資金繰の対応などに追われます。

また、このような、後ろ向きな業務に追われ、通常の営業活動がおざなりになり、精神的にも大きな負担を強いられる可能性があります。

さらに、このような事が起これば、会社の業績に大きな影響を与え、金額が大きければ、自社の死活問題ともなります。

そのため、営業として、常に取引先に変化が無いか意識して確認し、「何かおかしい」と感じれば、上司や経理部門などに相談・報告を行いましょう。

担当している取引先が倒産してしまうのは、営業の責任ではありません

会社としても、信用調査会社などからの情報を収集・管理し、被害を最小限に抑えるために日頃の対策を行っています。

ただ、その最前線で、信用調査を行っているのが営業だと認識して、日々の活動を行ってください。

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